雑木林

ウトウトしていたら一年以上経ってしまった。一年なんてあっという間だな、と思う。


それはそれとして私の行っていた大学には隣接して別の大学があり、そのまた向こうが玉川上水となっていた。もう20年も前の話である。


玉川上水沿いの道を西に進み、北に折れてちょっと行ったら左手に大学の正門、その正門を抜けて西にまっすぐ進み、
部活の連中がトグロを巻いているクラブハウスの裏側に行くと、そこから玉川上水の方に延びている細長い雑木林がある。


そこはいつも晴天だった。というか晴天の記憶しかない。
踏み込むと身のまわりの全ては木漏れ日のダンダラとなる。その中でドングリが芽を吹いている。
なぜかここには人は滅多に来ない。いつも静かであり、木の葉がサラサラと鳴る音ばかりが聞こえる。
いや息をひそめるとバッタが草の裏に隠れる音やミツバチの羽音も聞こえる様な気がする。静かなりに命に充ちていると思う。


もっと良く耳を澄ますと遠くのクラブハウスでバンドが練習している。ドラムの音が一番大きい。
ドドチッ、ドッチッ、ドドチッ、ドッチッ、ドチドッ。
ああまたトチった。いい感じでリズムに乗ってきたところでトチるから思わずこちらもツンのめる。
誰が叩いてるのかは知らないけれどトチらなければこの人うまいのにな、と思う。


そこでフーッと思い直す。そんな雑木林は大学の裏手には無かったと思う。