shizyukara2007-06-16

なにやらウダついているうちに、だんだん湿気が多い季節になってきた。モワーとした湿気が身の回りを取り囲むと、ちょっと足下が浮いた気分になってくる。ならないだろうか。


そして、足下が浮くと言えば怪談である。私は盲目的にオカルトや宗教を信じる人間は苦手だが、怪談は好きだ。ウソにしろ本当にしろ、怪談にはセンスがオブでワンダーな香りがする。 この度は「わからぬもの」のお話しである。


時は今から30年と少し前、私がまだ小学2年生だった頃の話である。私は当時、団地の二階に住んでいた。季節は夏の終わりで、時刻はまだ暗くなったばかり、おおむね七時頃であっただろうか。台所では母親が夕食の用意をしている。居間にはもう料理が並べはじめられており、テレビの音が聞こえる。空気は夕立があったのか、湿気は多いが不快ではない。


当時子供であった私は、ガキらしく意味もなくウロウロしたり、グルグル回ったりしながら団地の正面側にある部屋に入っていった。白熱電球に照らされたその部屋は、おおむねいつも通りの部屋であったのだが、何だか様子がおかしい。窓のカーテンのあたりがどうも変だ。よく見ると、カーテンの下側が光っている。何だろうと思ってカーテンを引いてみると、テニスボールくらいの大きさの光が二つ、窓の下側、曇りガラスになっている部分の裏側に水平に並んでいる。


はて、これはなんだろう? 奇怪な感じは全くない。窓を開けて確かめてみようかと思ったが、もし万が一、火のついたものが部屋の中に転がり込んできたら大変なので、窓の上側の曇りガラスになっていないところに顔をくっつけてのぞき下ろしてみると、何かが燃えている様なチロチロした乱反射が見える。私はこれはなにやらスゴイ自然現象なのだとコーフンし、母親を呼びこれは何かと聞いたらそんなものは見えないと言う。本当に見えないかと聞いたらやはり見えない、そんな訳のわからない事を言っていないで飯を食えと言う。


なんだつまらねえとすっかりフテくされて夕食を食べてから、よし再調査じゃとその部屋に入ると光はきれいサッパリ消えている。窓を開けて見てみても、何かが燃えた様子も無い。いったい何だったのだろうか…と書いているとちょうど母から電話があり、ついでにその事を訊ねてみると、そう言えばあの時なんだかわからない事を言っていたとねえの事。とすると、少なくとも夢ではなかったわけだ。いや、それ以前に見た目が余りにも自然で全然怖くなかったので、たまにある自然現象だとばかり思っていたのだが…。


なぜ母親には見えなかったのだろう? どうにも不思議である。